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それは満月の夜起こる

Posted by junko on 23.2012 アルゼンチン Argentina   1 comments   0 trackback


2012年2月7日




翌朝、約束していた時間にアイジ達の泊まる宿へ向かう。
部屋をノックすると、あーちゃんが出てきた。


「ちょっと、また大変なことになっちゃった」


昨日の一騒動が落ち着いたのも束の間、
今度はアイジに厄が降り掛かった。


「アイジが全身に蕁麻疹出ちゃって、今ツバサと一緒に病院行ってる」

「蕁麻疹!?えーなんでだろ、、」

「よくわかんないんだけど、夜中ずっとツバサが薬塗ったりしてて、
 あの二人全然寝ないまんま病院行ったみたい」



不吉な予感を察しつつ、とりあえず私達は朝食を取って、
二人を待つことにした。
幸いあーちゃんの体調は良くなっていて、
朝ご飯もモリモリ食べている。


しばらくして疲れきった二人が戻って来た。
結局原因はわからないまま、とりあえず飲み薬を処方してもらったらしい。
昨晩は皆同じものを食べているから、食あたりとも考えにくいし、
ベッドバグだったらこんな腫れ方はしない。

「疲れかなぁ?」

そんな風にして、ひとまずアイジの件は落ち着かせることに。







昨晩寝ていない二人と、まだ体調が万全とは言えないあーちゃんを宿に残し、
私と啓陽はプエルト・イグアスの町を散歩した。
ふと入ったインフォメーションセンターで、
イグアスの滝の行き方などを確認していると、
私達の目にこんな文字が留まった。



『満月ナイトツアー』



イグアスの滝を夜に見るツアーで、
それは満月の日にしか行われない限定もの。

そしてたたみかけるように女性スタッフのこの一言。


「今夜が満月よ」








昔、TV番組か何かで啓陽はイグアスの滝を知った。
それは、満月の光だけに照らされた滝が、
轟音と共に流れる映像だったという。
彼にとってのイグアスの滝は、
まさに今夜、私達の手の届くところで待っている。



「行ってみたい、、、うん。見たいよね、、、うん。行こう!!!」



そんな風にして、その満月ツアーを催すツアー会社へと向かい、
料金や時間などを確認して宿へ戻った。
相変わらずぐったりしている彼らにそれを伝えるのは少々勇気が必要だったが、
先月のウユニは新月で、今回のイグアスは満月で。
月の満ち欠けに身を任せるのもオツなもんじゃないかって。
そう感じていたのは私だけじゃなかったのかも。

幸いみんなも同意してくれて、
昼間のうちにしっかり休息を取って、
夜8時出発のツアーに参加することにした。
料金はUSドルで約130$。決して安くない。
それだけに期待してしまう。



私と啓陽以外の3人は部屋で休んでいて、
私達はコモンルームでパソコンしたりして。
それぞれがゆっくり過ごしていると、
今度はあーちゃんが神妙な面持ちでやって来た。


「私も蕁麻疹みたいの出てきた、、、」


一瞬凍り付く。
え、、どうして、、


「オレもまた出てきたんすよ」


たたみかけるようにアイジ。


「なんであたしだけ大丈夫なんだろー?」


わりと呑気なつーちゃん。




ネットで薬の副作用なんかも調べながら、
とりあえずアイジに処方された薬をあーちゃんも飲む。

それにしても全く謎が深まるばかりの現象に、
みんな戸惑う。
無事な人間と、症状が出る人間の違いを必死に探すも、
これといった特定の原因が出てこない。






それでも時間は過ぎるわけで。
満月ツアーの出発だ。
旅に体の不調やハプニングはつきものだから、
これでへこんでたって仕方無い!と、みんな気持ちを入れ換えて。




行ってきました、イグアス満月ツアー!!!




さすがツアー、ホテルの前で送迎付き。
優雅にバンに乗り、とんでもないスピード野郎の怖い運転に怯えること約30分、
私達はついにイグアスの滝の入り口ゲートへと着いた。
これは有名なツアーらしく、他にもたくさんの観光客であふれてる。

さっきまでのとんでもないスピード野郎は、
打って変わってとても優しい態度で私達を案内してくれた。
どうやらハンドル握ると人格変わるタイプらしい。






DSC_0255.jpg
何かが起こりそうな夜、、、







誘導されるまま、敷地内の列車に乗り込む。
月明かりに照らされた林の中を進む列車。
なぜだろう、勝手に胸がドキドキしてくる。
いや、ドキドキ、というよりも、そわそわ、の方が近いかな。
とにかく不思議な気分なんだ。
きっとそれは月の魔力。
なんかそういうの、あるみたいね、ほんとに。
月の力ってさ。
そう言われてみると、本当にそんな気がしてくるような、
月明かりの列車。





DSC_0270.jpg






しばらく乗ったと思う。
列車は小さな駅に停まり、私達はそこから歩き出した。
もちろん人工的な灯りは一つもない。
月明かりだけを頼りに、進める歩幅は最初は小さい。
だけど目が慣れてくるにつれ、しっかりと足を踏み出せるようになる。

林の中に造られた木道をひたすら進む。
いくつかの橋を越える。
どれくらい歩いただろう。
15分?20分?




ふと、あの滝独特のごぉぉぉぉーという音が耳に入って来た。
滝は近い。




どんどん大きくなる、水の流れ落ちる音。




高まる鼓動。









そして突然目の前に現れた。






DSC_0286.jpg








これがイグアスの滝か。







DSC_0289.jpg









意気込んで三脚を持って行った。
シャッターを開けて撮った。
するとまるで昼間のような空の明るさになってしまったが、
これはあくまでも夜の写真。
満月の光だけに照らされた、滝の写真。














音が凄かった。
夜だから、他の邪魔な音が消されてるのかな。
おなかに響くようなあの音は、
たしかに、自然の、地球の音だった。

だけどのその現実的な音とは対照的に、
目の前をもの凄いスピードで流れ落ちるこの水は、
なぜだか神秘に満ちあふれていて、
視覚と聴覚の差が融合というか、
うまく言えないけど、
現実的な神秘性というものを同時に感じたわけだ。







DSC_0292.jpg








滝の観賞時間はあっという間に過ぎ、
入り口ゲートに近づくにつれ人工的なライトが増える。
それに伴って、初めに感じていた月の神秘さは失われていった。

またもや恐ろしいスピード狂と化したオッサンは、
私達を奇跡的に無事に宿まで送り届け、
とっても優しい笑顔で去って行った。








いろいろあった今日だったから、
今夜はゆっくり寝よう。
早くお風呂に入って寝よう。




お風呂。




5人部屋にある、ひとつだけのお風呂。




早い者勝ち!!!
レディファースト!!!
とはいかないのが我らのルール。
ここはじっくり、勝負の世界で決めましょうや。



始まるUNO。



そう、私達は何かにつけて、よくUNOをする。
それも、SALルールという啓陽たちが勝手に作り上げたルールのもとで。
初めは懐かしくて忘れてしまっていたUNOだけど、
相手を陥れたり騙したり、けっこう面白いゲームなんだ。





RIMG0239.jpg
UNOをあなどるかなれ






そうやって順々にシャワーを浴びて、
みんながベッドに入ったのはもう深夜2時近く。
私はすぐに、眠りに落ちた。










何時間経ったんだろう。
なんだかざわつく物音。
ふと右を見ると、そこで寝ているはずの啓陽が居ない。
左を向くと、あーちゃんがスヤスヤ寝ている。
声はお風呂場から聞こえてくる。
寝ぼけた頭でお風呂場に向かう。
そこで見た映像で一気に覚醒。




啓陽にも、蕁麻疹、、、、




それに、またもやアイジまで、、、




つーちゃんが一生懸命二人に薬を塗ってくれていた。
幸いつーちゃんは無事なよう。
私も不安になって自分の体を確認するが、
至って無事なよう。




アイジ、啓陽、あーちゃん(←寝てるけど)
5人中3人が蕁麻疹。
もうここまで来ると、この部屋に何か原因があるとしか思えない。
ベッドか?シーツか?
何かが良くなくて、体が拒否反応を起こしているんだ。
アイジと啓陽は、

「もうこのベッドで寝たくない、ていうかこの部屋に居たくない」

と言って、廊下のソファで眠り出した。




私とつーちゃんは、自分達だけが無事なことに安心するというより、
逆に戸惑いつつも、
疲れと眠気には勝てず、結局そのまま自分のベッドで眠ってしまった。
横を振り向くと、あーちゃんは相変わらずスヤスヤと眠っていた。











  

プロフィール

junko

Author:junko
北の大地でお魚食べて育った少女が、
世界へ旅に出ます。

写真が好き。
でも人はもっと好き。

まだ見ぬ出会いを、笑顔を、そして
感動を求めて。

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